ウルフーオオツカ法(低侵襲不整脈手術)

ウルフオオツカ法 ( 低侵襲不整脈手術 )

心房細動に対する完全内視鏡下不整脈手術(ウルフオオツカ法)を行います。
ウルフオオツカ法は、内視鏡(胸腔鏡)で行う手術法です。胸部の数か所の小さな穴から胸腔鏡を使用し、カテーテル治療のアブレーションと血栓症(脳梗塞など)を予防する左心耳切除を同時に行える手術です。

心房細動とは、日常診察では一般的な不整脈である。有病率は男女とも加齢とともに増加し、2005年の時点では我が国で71.6万人が、2050年には約103万人(総人口の1.1%)を占めると予測されている。今後高齢化が進むと予測されており心房細動を持っている方は増加することが予想されます。

心房細動の怖いところは?

心房細動では、心房が細かくプルプル震えた状態となり、左心耳という部分で血液が淀み、血液が固まって血栓を生じることがあります。何かの拍子に剥がれ落ちて、体の血管を詰まらせる塞栓症を引き起こします。もし血栓が脳の血管を詰まらせた場合は、脳梗塞を引き起こします。脳梗塞の約20~30%が、心房細動を原因とされています。

心房細動の治療とは?

不整脈を抑える薬剤(抗不整脈薬)や、脈拍を調整する薬剤、血液をサラサラにする薬剤を内服する抗凝固療法が必要になります。抗凝固療法はCHADS2スコアを参考に薬剤を開始します。(図1)CHADS2スコアが高くなると脳梗塞発症率も高くなってきます。(図2)

しかし、出血性副作用による内出血や貧血を来たした場合、毎日の服薬そのものが困難な場合、出血性疾患(脳出血、上下消化管出血、がん など)の場合には内服が困難になってきます。そこで、内服離脱可能な手術方法が考案されました。

図1 CHADS2 スコア
図2 CHADS2スコアと脳梗塞発症率

WOLF-OHTSUKA法(ウルフオオツカ法)

WOLF-OHTSUKA法(ウルフオオツカ法)は心房細動に対する外科手術法です。
胸部の数か所の小さな穴から胸腔鏡(内視鏡)を使用して、心房細動を治療するアブレーション(電気で焼く)と血栓症(脳梗塞など)を予防する左心耳切除を同時に行える手術です。これは、全身麻酔で手術時間は1時間~1時間半程度で行われ、入院期間は約1週間となっております。(図3.4)

アブレーションとは、心臓外側から非常に作業効率の良いクランプという道具を使用し、異常な電気伝導をまとめて取り囲むように焼く作業を短時間(約数十秒)で確実に完了できる。(写真1)

写真1:左肺静脈隔離(アブレーション)

左心耳切除とは、内視鏡手術で使われているステープラという器械にて左心耳を瞬時に根部から離断する。(写真2)

大きな左心耳が中央、切除用ステープラ挿入
左心耳を切除

手術前後のCT写真

WOLF-OHTSUKA法(ウルフオオツカ法)は
どのような患者さんに最も効果的か?

近年、左心耳という部分に注目が集まるようになってきました。心房細動では、左心耳は無用の長物と言うよりもありがた迷惑というか、神様の「いやげもの」といっても良いかもしれません。その左心耳を切除することで血栓ができにくくなり、脳梗塞を起こすリスクが低くなるといわれております。 内科的には心内膜から左心耳を閉鎖するデバイスが開発され施術され利用になってきました。外科的には心外膜から左心耳を閉鎖するクリップ(AtriClip)やステープラで切除をおこなうウルフオオツカ法があります。しかし、切り残し(残存断端10mm以上)があると脳梗塞のリスクはさらに上がってしまいます。切り残しを防ぐ目的で、手術中に経食道心エコーを使っております。

心房細動の方には、この手術法は朗報となると考えております。心房細動でお悩みの方がいらっしゃいましたら、患者様に沿った治療法をご提案できると考えておりますので、ご相談ください。