左心耳を閉鎖するのって体にどんな影響が・・・?!

ウルフーオオツカ法で行われる左心耳切除(閉鎖)によって体にどんな影響を及ぼすのか?
 心房細動の患者さんの血栓塞栓性脳卒中(脳梗塞)はそのほとんど
(90%)が左心耳での血液うっ滞が原因とされている。
 最近では、左心耳閉鎖(切除)が注目されてきているが、全身への影響は不明である。
 1つ面白い論文を見つけたので影響について書いてみます。
 左心耳を心臓の中から閉鎖する方法と心臓の外から閉鎖する方法で比べられた論文です。

左心耳閉鎖(切除)が全身の恒常性に及ぼす影響

①血圧への効果

 左心耳閉鎖すると、
  交感神経系(アドレナリン、ノルアドレナリン)という血圧上昇をきたす  
  物質が閉鎖24時間後から有意に低下し、3か月後も有意に低下する。

  レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系(RAA系)に関与する
  ホルモン(レニン、アルドステロン)も3か月後には有意に低下する。 

  ⇒ おそらくレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系(RAAS系)のダウンレギュレーション(下方抑制)が、血圧低下に関与していると考えられる。

  術前後の降圧剤(血圧を下げる薬)は触らない条件下での結果。

   血圧を下げる効果がある。

②ブドウ糖と脂肪の代謝への効果
  

 インスリンレベルの上昇が閉鎖24時間以降に有意であった。
  しかし、血糖値は変化なかった。

  ⇒レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系(RAAS系)のダウンレギュレーション(下方抑制)が、ベータ細胞をアップレギュレーション(上方抑制)しインスリンレベルの上昇が考えられる。
    ⇒ 血糖の低下につながる。

  アディポネクチン(インスリン受容体を介さない糖取り込み促進作用)
  ⇒ 3か月後に有意に増加。
   ⇒ 血糖の低下につながる。
  
  遊離脂肪酸(脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪が分解されてできる脂肪。)     
  ⇒ 3か月後に有意に低下。
   ⇒ インスリン抵抗性を下げる。血糖の低下につながる。

 血糖調整に有利に働く可能性あり

心房細動患者さんで左心耳を切除(閉鎖)することは、RAASのダウンレギュレーション、潜在的なトリガー/再突入の排除、左心房量の減少によって心房細動とその下にある基質の進化を変えるのに非常に有益である可能性があります。

左心耳切除は、脳梗塞の予防効果
       血圧の降圧効果
       心房細動の再発予防効果
       糖尿病の血糖降下

          が期待できる。!
       

 ただし、全ての関係性は不明であり、今後の研究が必要。

論文:
Left Atrial Appendage Closure and Systemic Homeostasis: The LAA HOMEOSTASIS Study Dhanunjaya Lakkireddy
J Am Coll Cardiol. 2018 Jan 16;71(2):135-144

アディポネクチンって?
 ⇒血管を修復することにより、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞の予防改善
 ⇒糖を利用することにより、糖尿病の予防改善
 ⇒脂肪を燃焼させることにより、高脂血症の予防改善
 ⇒血管を拡張させることにより、高血圧の予防改善
 ⇒腫瘍の増殖抑制により、抗がん作用
 ⇒老化防止
 ⇒ヒアルロン酸分泌促進